過多月経とは
「1回の月経の経血量が150㎖以上ある」状態です。レバー状の大きな塊になっている経血(凝血塊)がみられる場合も、過多月経に該当します。
しかし、実際に出血量を調べて診断する方法は行いません。凝血塊の有無や、ナプキンを替える頻度などが分かっていたとしても、正確な出血量は把握しきれません。
客観的な指標としては鉄欠乏性貧血の有無で、月経が原因で鉄欠乏性貧血が起こっていると血液検査で判明された場合は、過多月経の診断が下されます。
症状
「ナプキンの交換頻度が多い」「生理中に凝血塊(レバー状の血の塊)が2日以上見られる」「昼間でも夜用ナプキンをしないといけないほど経血量が多い」といった症状が挙げられます。これらの症状があると鉄欠乏性貧血を発症しているケースが多く、倦怠感や動悸、息切れなどの症状が現れ、日常生活に影響を及ぼすようになります。
しかし、貧血がだんだん進行して慢性化すると、貧血だと自覚しにくくなります。
実際に、顔色が青白くて血液検査でも鉄欠乏性貧血が疑われる状態でも、元気そうな様子を見せる患者様は決して少なくありません。
原因
原因は2つに分かれ、一つ目は「子宮疾患が原因で発症しているケース」と、2つ目は「過多月経を引き起こす疾患が特になく、体内のホルモンや血液の状態が原因で発症しているケース」です。
「子宮疾患が原因で発症しているケース」とは、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症などの疾患が原因で、過多月経になることです。このケースは特に、30代の方に多くみられる傾向があります。また、50代以降の患者様の場合は、子宮体がんの発症の有無も考慮する必要があります。このように、症状や年齢を細かく診て、原因を特定することが極めて重要です。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症などの疾患の有無につきましては、エコー検査やMRI検査で、簡単に発見することができます。
「体内のホルモンや血液の状態が原因で発症しているケース」とは、女性ホルモンの分泌異常による無排卵周期症と、プロゲステロンの分泌異常などが原因で、過多月経になることです。これらの原因は、排卵が起こらない、もしくは排卵してもプロゲステロンの分泌量が少ないことが原因で発生します。このケースは特に、思春期や更年期の年代の方に多くみられます。
基礎体温の測定やホルモン検査、エコー検査などを行って原因を特定しますが、中には原因が特定できない方も多くいらっしゃいます。
治療方法
薬物療法と手術療法があります。
治療法は、現在の年齢や器質的疾患の有無、妊娠・出産を希望されているかどうか、子宮を残しておきたいかどうかなどを考慮し、患者様ひとりひとりに合ったプランを提案します。
内科的疾患が原因の場合は、過多月経そのものを治療するのではなく、原因となる疾患の治療を最優先にしていきます。
無排卵周期症など、女性ホルモンの分泌異常が原因の場合は、貧血治療を受けていただきます。また、卵胞・黄体ホルモン配合剤や黄体ホルモン製剤、LNG-IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)など、ホルモン剤や止血薬を用いる薬物療法も検討していきます。
子宮筋腫などの子宮疾患が原因の場合は、手術療法を検討しますが、症状によっては手術を行わず、薬物療法と貧血治療で治療できるケースもあります。特に、近いうちに閉経を迎える更年期女性の場合、GnRHアナログ製剤を用いる「逃げ込み療法」で、手術を受けずに治療できる可能性があります。